ちょうしフラット通信

日本一早い初日の出の街・銚子でがんばる「JR銚子駅・若手おもてなしチーム」のチャレンジ

2018年12月17日

あっという間に師走になってしまいましたね。大掃除や年末年始の準備に大忙し、という方も多いのでは?
年末年始のお出かけの予定はこれからという方は、銚子市に初日の出を見に行くのはいかがですかか?
関東最東端にある銚子市は、山頂・離島を除いて日本で一番早い初日の出が見られる街です。特に君ケ浜からは、初日の出と雄大な太平洋、犬吠埼灯台がおりなす美しい景色を見ることができるため、毎年全国各地から多くの観光客が集まります。

それに伴って1月1日は、東京都、埼玉、千葉県内からJR銚子駅までの臨時直通列車「犬吠・銚子初日の出号」が運行され、地元の銚子電鉄も臨時ダイヤでの運行となります。
市外から来たみなさんが最初に降り立つのは、銚子の玄関口であるJR銚子駅。今回は、初日の出に合わせて若手の駅社員の方々が面白いチャレンジをされると聞きつけ、取材に行ってきました。
まず最初にお話を伺ったのは、銚子駅でたった一人の女性駅員であり、入社一年目の鈴木さんです。

鈴木亮子さん(32)
空港勤務など、主に接客業を経て今年JR東日本(東日本旅客鉄道株式会社)に入社。
銚子駅で窓口業務などを担当している。

ーー初日の出に向けて、銚子駅では初めての取り組みを行うと伺いましたが…。
鈴木さん:「階段アート」を企画していて、今準備をしているところです。灯台や日の出など、銚子のモチーフになるような景観を、駅構内の階段を使ってお客さまにお見せする予定です。

ーー業務の合間にやっているんですか?
鈴木さん:はい。銚子駅には、入社して1〜2年目の社員が集まって企画・実行するプロジェクトチームがあるんです。若手社員5人とアドバイザーの嶋田助役の6人チームでやっています。
シフトもあるので、会えたらできるだけ話し合いをするようにしたり、1人1人がタブレット持っているので、それでスケジュール共有や連絡を取り合ったりしています。
できる人がやる、できない人はどこかでフォローしてもらえれば、という感じです。

ーーチームワークが良くなりそうですね。鈴木さんの他にはどんなメンバーがいるんですか?例えば、絵が上手い人とか…。
鈴木さん:絵が上手な人がいないんですよ(笑)
リーダーの内田さんは電車好き。一眼レフを持っていて写真が撮れるので、近々アート用の写真を撮りに行こうかと話しています。他にはスケジュール管理をする人とか…。
私はひたすら階段の高さを測って切って貼る地味な作業をする予定です。


▲後日銚子駅に伺うと、インパクトある犬吠埼灯台の写真がメインのデザインが完成していました

ーープロジェクトチームの目的はどこにあるんですか?企画はどんなものでもいいんでしょうか?
鈴木さん:基本的には、お客さまが喜ぶことやお客さまが増えるような活動をしています。以前、銚子商業高校の学生さんと、銚子PRのためのパンフレットを配りに稲毛駅(千葉市内)に行ったことがあります。
他にも例えば、外国のお客さまが多い駅なら「英語に関連したプロジェクトをやろうか」という感じで、このプロジェクトからいろいろな企画が生まれていくんです。
会社としては、社員の成長のためというところもあります。失敗してもいいからやってみようというスタンスです。
今回の階段アートも、銚子の初日の出号に伴う企画として嶋田助役に相談したところ、「じゃあ応援するよ」と言ってくださったことで始まりました。

ーー先輩からの強力なサポートがあるんですね。大変なこと、不安なことはありますか?
銚子駅には階段が2面あるので両方やりたいんですが、普段の業務の合間にやるのでなかなか時間がないんです。
また、自分にとって初めての初日の出号がどうなるのか、想像できないというのもあります。

ーーたくさんのお客さまが来ますもんね。
乗り換えに時間がないので、何かを渡すよりも見て楽しめるものがいいと思っています。階段アートで、たくさんのお客さまに満足してもらえれば。

ーー階段アートはいつまで展示する予定ですか?
シールの耐用期間ギリギリまで、できるだけ長く貼っておいて楽しんでもらいたいです。


▲12月上旬に行われた試し貼りの様子。業務の合間をぬってテキパキと行われていました。

続いて、若手チームのアドバイザーを務める嶋田さんにお話を伺いました。

嶋田康さん(43)
千葉県旭市生まれ銚子西高校を卒業後は東京で広告関係の仕事に携わる。
31歳でJR東日本(東日本旅客鉄道株式会社)に入社。
成田駅、成田空港駅勤務を経て、2017年に銚子駅に配属。
主に営業全般、人材育成を担当している。

ーー若手の皆さんがチャレンジされている階段アートをどのように見守っていますか?
嶋田さん:初めてなのでどれだけのものが提供できるかわかりませんが、これから年々熟練度を増して、「階段アートなら銚子駅の技巧がすごい」、と言われるようになりたいですね。階段アートのクラフトマイスターを目指してもらいたいです。

ーーお客さまにはどのように感じてもらいたいですか?
嶋田さん:駅の中って、乗り換えだけでバタバタして終わってしまうことが多いと思います。ですから、初日の出を見終わって帰られるお客さまに、時間のない中で最後に一つでも楽しみを提供できれば、と考えています。
皆さん、階段のステップの高さってどれも同じだと思っているかもしれませんが、実は一段目は負担がかからないように低くしてあったりして、微妙に高さが違っているんです。
最新設計だと一段目は低く、それ以外は統一でピシッと測って作っているみたいですが、銚子駅は昭和の古い駅なので、今の考え方とはまた違った考え方で設計されているようです。それでも、合わせるところではカチッと合っている、というか。その辺の魅力も伝えたいんですよね。伝えられるかな〜…(笑)

ーーということは、全部同じ大きさでカットすれば階段アートの出来上がり!というわけではないんですね。
嶋田さん:同じサイズならどこの駅でも同じようにできると思うんですけど、そうではないんです。一段一段測って、風景を思い浮かべながら丁寧に作っていきたいと思います。クラフトマイスターを目指していますからね(笑)

ーー楽しみにしています。


▲12月上旬に行われた試し貼りの様子

ーーその他にも、初日の出に関連して行う企画などはあるのでしょうか?
嶋田さん:今年は、「あなたにとっての初日の出」という企画を打ち出しています。以前配属されていた成田駅では、1ヶ月くらいは成田山新勝寺の初詣の時期でした。近所の神社ではもう初詣を済ませたけど、今回は成田山への初詣、という感じで。それと同じで、初日の出というと、1月1日の日の出というイメージが強いかもしれませんが、「今年初めて見る日の出は、あなたにとっての初日の出ですよ」「元日ではなくても、銚子の美しい初日の出を見に来てくださいね」という気持ちで企画しました。
前の日から美味しいものを食べて、温泉に入って、ワクワクしながら初日の出を迎えてほしいです。初日の出を見終わったら名物のお土産を買って帰ってもらえたらと思っています。
今年はプロジェクトが立ち上がったのが10月後半だったのであまり詰められませんでしたが、今後も継続的にやっていきたいですね。
※「あなたにとっての初日の出」:1月2日~17日の間(今年は1月18日まで、銚子で日本一早い初日の出が見られるため)、市内の宿泊施設などで『「あなたにとっての初日の出」プラン』が用意される予定。サービス内容は施設ごとに異なります。

詳細はこちら→ あなたにとっての初日の出❢|銚子市観光協会
※また、毎年恒例の「上り銚子でハイタッチ」も行われます。初日の出後のOTS犬吠埼温泉

犬吠駅発銚子駅行き「上り列車」に乗車する方には、JR銚子駅、銚子市観光協会、銚子電気鉄道の開運職員がハイタッチ!開運職員たちは「調子が上がるご祈祷」を受けており、皆さんの新年の調子が上がっていくよう願いを込めてハイタッチしてくれます。

ーー駅業務だけでなく、広い視野で銚子全体のことを考えているんですね。
嶋田さん:もともと、これなら地元に貢献できるのではないかと選んだ仕事なので、どうやって地元に貢献するかをいつも考えています。
銚子駅での勤務は、市の玄関としてここからおでかけしてもらうこともそうですし、他の地域から来た人に銚子を紹介する窓口になっているところが魅力だと思っています。

ーー銚子への愛をすごく感じます。若手チームの皆さんにも地域との関わり方を示したりしているのでしょうか?
嶋田さん:地域の皆さまとのお付き合いは一過性のものではありません。そのため、自分の次の世代の社員も、現在と同じように地域の皆さまと親交を深めていけるように、先輩から後輩への流れを作り、若手社員を育成しています。
あとは、地域の方々は長く地元での活動に関わっているので、私たちも、過去の実績や銚子市とはこういうものだ!というベースを深く理解することが大切です。そのため、まずは社員に銚子を知ってもらうようにしています。

ーーそういう部分では若手チームのアドバイザーとして、嶋田さんは適役なのでは?
嶋田さん:そうかもしれません。(笑)
まずは感動してもらうことが一番大事だと思っています。心にふっと残るところですね。何がこころの琴線に触れるかはわからないので、いろいろなところに連れて行っています。

ーー例えばどこに連れていくんですか?
嶋田さん:新しいところから古いとこまで、さまざまです。
例えば、誰もが感動する海の風景が見られる犬吠埼灯台近辺や東洋のドーバーと言われる旧有料道路エリア。この辺りはいろいろな角度から見せています。
あとは、ベタなソウルフード…、銚子の人間はこれを食べて育ってきたよ、というようなものを紹介しています。一心(新生町)のカツカレーやさのや(飯沼町)の今川焼きなど。
ハンバーガー屋さんにも行きましたね。
Around the Corner に立ち寄って、お店の人に話しかけてみたりして。例えばハンバーガー一つとっても銚子の食材を使っている、ストーリーがある…。そういうところに共感してほしいと思っています。

ーー「一心」のような昔からあるお店から、銚子の文化を守りながらも新しいことをやっているお店まで、本当にいろいろなところに行っているんですね。
嶋田さん:新しいことを始めようとしている方の中にも、銚子に思い入れがある方が多いと思います。そういった思いを社員に汲み取ってもらって、その中で、自分が銚子で何ができるかを考えてほしいと思っています。

ーー今後銚子駅でやっていきたいことはありますか?
嶋田さん:せっかく駅舎が新しくなりましたので、新しい駅を使ってどれだけ楽しいことを提供できるかを考えています。
列車の本数が少ないので、待っている時間にすることがない!とならないようにしたいですね。雨で外に出られない時に、駅でもこんな楽しみがあるよ、というものを提供する。それを人材育成と絡めてしていきたいです。


▲現在のJR銚子駅。醤油蔵をイメージした駅舎内は、木材の一部に千葉県産の山武杉を使用。大漁旗が掲げられ、銚子らしさが感じられます。

ーーとにかくお客さまが喜ぶことをしていきたい、という感じでしょうか。
嶋田さん:そうですね。もし大雨で外に出られなくても、「普段はこんな景色が見られるんです、だからもう一回来てくださいね」ってアピールできたらと思っています。

駅の業務だけではなく、銚子の玄関口として、銚子を盛り上げるために何ができるかを常に考えている職員さんたち。お正月は初日の出とともに、そんな銚子駅のおもてなしを楽しんでみてはいかがでしょうか。

(聞き手・佐野明子/文・江戸しおり)

2019年初日の出の詳細はこちら→https://www.city.choshi.chiba.jp/kanko/hinode/